Solution 7 新しい視点からの次世代モビリティの開発

一人ひとりの快適な移動を実現するため未来のモビリティ開発がスタート

 次世代モビリティの研究・開発も、近距離の一人移動の活性という視点に特化して考えると、これまでにない斬新な発想から進めることが可能となります。たとえば近距離の移動に限定すれば、従来のような大きなモーターやバッテリーは不要となり、一人移動を突き詰めれば、車体そのものはもっと小さくすることも可能となります。実際に利用する市民のことや、その行動スタイルに焦点を合わせて機能を突き詰めていくことで、これまでにない新しいタイプのモビリティを生み出すことが可能となります。これまでのモビリティは、さまざまな人があらゆる目的で利用できるよう高い汎用性をめざしてきました。その結果、多様なライフスタイルとの間にズレが生じ始めてきたのです。
 柏ITSスマートシティでは、モビリティに人の暮らしを合わせるのではなく、人や地域に合わせて新しいモビリティを生み出していきます。さまざまな特徴を備えた新しいモビリティが柏市民一人ひとりの快適で便利な移動をサポートする。それが、私たちのめざす、本当の「モードフリー」です。柏ITS推進協議会は、市民の小さな要望にも耳を傾けながら、新しい研究に取り組んでいきます。そして、いつか、そこから地域全体を活性する交通システムに育っていくことをめざしています。

キャパシタ搭載の超小型電気自動車/非接触電力伝送システム -スーパーキャパシタ搭載の超小型電気自動車(キャパシタEV)とワイヤレス給電-

 現在の電気自動車には充電時間が長く航続距離が短いという電池性能に起因する問題点があります。この問題を解決すべく各機関で電池性能向上にむけた研究開発が行われています。しかし視点を変え,街中の至る所で自動的に大電力での充電が可能となれば費用と時間をかけて電池を高性能化せずとも電気自動車の航続距離延長は可能となります。これを実現するのがワイヤレス給電とスーパーキャパシタです。
 電気自動車へのワイヤレス給電が可能となれば駐車場での充電のみならず、交差点の赤信号での停車中や高速道路で走行中の車両への給電が可能となります。東京大学 新領域創成科学研究科 堀研究室では国土交通省 国土技術政策総合研究所と走行中の電気自動車へのワイヤレス給電に関する共同研究を行なっています。
 ワイヤレス給電の方式として磁界共振結合という方式を用いることが検討されています。磁界共振結合はコイルとコンデンサによる電気的な共振を用いることにより電力を伝送する方式です。電力を送る送電器と電力を受ける受電器を対向させ、その間で電力伝送を行います。この送受電器はコイルとコンデンサによる共振回路で構成され、共振周波数と同じ高周波電圧を印加することにより高効率な電力伝送を実現しています。使用する電力伝送周波数は約100kHzから20MHzです。

 この方式は従来の電磁誘導を用いた方式と比較して大きい伝送距離で高い伝送効率を実現できます。当研究室の実験結果では共振周波数を13.56MHz、直径30cmの送受電器を用いて20cmの伝送距離で96%の伝送効率を実現しています。別の実験結果では約100KHz、伝送距離20cm、受電電力3.3kWにおいて、高周波電源と整流器の効率も含めた合計の効率で90%を達成しています。
 走行中の電気自動車へのワイヤレス給電では、給電区間を長くする必要があります。そこで中継器と呼ばれるものを用いることで給電区間を延長することが考えられています。中継器は電源や送電器と電気的な接続を持たず、走行方向に羅列するだけで安価に給電システムを構築することができます。
 スーパーキャパシタは電池と違い大電流の充放電が可能であるため、数分で充電が完了する超高速給電が可能となります。また電池は化学的な反応を利用しているため経年変化で劣化が発生しますが、キャパシタは物理的な電荷の蓄積による充電であるため大電力の充放電においても劣化することはありません。このスーパーキャパシタを超小型電気自動車に搭載し、15秒の充電で15分の走行を実現しています。
 ワイヤレス給電とスーパーキャパシタを組み合わせることにより,未来の電気自動車を実現することができます。

パーソナル・モビリティ・ビークル -パーソナル・モビリティ・ビークル:新しい移動手段をつくる-

 地球環境保全や高齢社会への対応の観点から、生活の重要な一部を形成する街路、歩道、施設内などの移動空間を、人にも環境にもやさしく構築することは必要となってきています。従来の自動車交通や鉄道などの公共交通のみではカバーできない新たな交通モードの整備が求めらえてきています。そのため、公共交通や自動車と連携できる利便性・柔軟性を有するパーソナル・モビリティ・ビークル(Personal Mobility Vehicle、PMV)が期待されています。新しい移動手段となる個人的な乗り物、すなわち、PMVが持つべき特徴として、ここでは以下の点を挙げます。

  • 人と環境にやさしい動力で,快適かつ効率的な近・中距離移動を実現します。
  • 道路空間のみならず、歩道、施設内での歩行者混在環境でも安全に使用されます。
  • 鉄道などの公共交通や自動車に持ち込める可搬性があります。

[デザインと開発]

 これまでPMVとして様々な方式が提案され、研究が行われています。今後もこれまでの方式とは異なるPMVが提案されてゆくと考えられます。ここで、自転車モードと平行二輪車モードという二形態を持ち合わせ、お互いのモードに機構的に可変で、状況に応じて使い分けることができる「ハイブリッド方式PMV」(Stavic-D)を提案されました。
可変モードの切り替えについては、中高速走行時には直列二輪である自転車モード、低速走行時には平行二輪モードとして利用するコンセプトです。こういうコンセプトから、新しい発想を思いつきました。それはステアリング機能を持つ前輪1輪、後2輪の三輪式自転車型(Stavic-C)であり、後輪2輪の回転数に差をつけることにより旋回する新しい制御方式を有します。

 さらに、走行安定性を向上する機構も検討しています。また、二通りの構造の二輪車も開発されます。まずは着席型のペダル式平行二輪車(Stavic-H)です。そのメリットとしては、立ち乗りより長時間の移動が可能であり、姿勢安定化制御と駆動制御を独立させることが容易です。駆動方式については,人力のみ,全電動方式(Stavic-E)、およびアシストの三通りが考えられます。もう一つデザイン、斜めモード(Stavic-A)は、車軸がずれている二輪車です。そのモードを用いることで新たな研究開発を展開されます。また、四輪車版PMV(Stavic-4S)についても、検討中です。

[交通環境への受容性および歩行環境への親和性]

 人間と協調するPMVにおいては、ドライバとの協調のみならず、交通環境への受容性や、歩行環境へ親和性も重要な課題です。研究の一例として、電動平行二輪車両が歩行者混在空間に入った場合の安心感などについての評価実験結果が示されでいます。歩行者混在走行実験などにより、低速走行時における歩行者に対する親和性については,車両の形態や速度によって大きく変化を受けます。また、PMVを用いた測定実験では、車両の形態や速度の違いによって、親和性が変化することを合理的に説明できています。

■未来予想図

■パーソナル・モビリティ・ビークル (PMV)

>>一覧へ戻る