Concept

ヒトとマチと、共に成長していく柏ITSスマートシティ

 柏ITSスマートシティをひと言で表すと「ヒトとマチと、共に成長するITS」です。さまざまな移動・交通情報を最先端のITS技術で収集~蓄積~加工し、生活活動情報として可視化し、それによって市民一人ひとりが気づきを高め、どのような交通行動が地域や環境にとってプラスかを判断し、行動する。そうした情報循環が継続的に行われた結果、環境への負荷が減り、渋滞が緩和され、人や物が活発に移動し、地域が活性されていく。交通システムを核としたプラスのスパイラルこそ、私たちのめざす「ヒトとマチと、共に成長していくITS」です。
 中でも大切なのが生活活動情報の多様さと分かりやすさです。生活に密着した情報だからこそ市民の気づきを高め、主体的な行動変容を促すことが可能となります。もちろん、そうした行動変容を支えるため移動手段と交通システムやの開発・整備も不可欠となります。より効率的で便利な交通システムや市民一人ひとりの状況や目的に対応する多彩な移動手段など、誰にとっても使いやすい移動・交通手段と移動・交通環境を整えていくことが重要となります。分かりやすい生活活動情報と、それを使う市民、その行動を支える交通システムが連動しながら成長し続けていくのが柏ITSスマートシティの大きな特徴です。

柏ITSスマートシティの展開フロー

柏ITSスマートシティがめざす3つのフリーと地域経済の活性化

 ヒトとマチと、共に成長していくITSを理解するキーワードは「3つのフリー」です。
 柏ITSスマートシティでは、可視化された生活活動情報を市民に提供することで、市民の行動変容を促します。約40万人の柏市民、その一部の人が自家用車から公共交通に乗り換えるなど、移動方法を工夫することで相当量のCO2が削減される、いわゆる「カーボンフリー」が実現されることは、すでに実証実験によって証明されています。また、生活活動情報を活用することは渋滞の回避やスムーズな乗り継ぎに繋がり、「ストレスフリー」な移動・交通環境を実現することができます。もちろん、それらを実現するためには、多様な移動・交通手段を整える必要があります。柏ITSスマートシティでは、ハプリックとパーソナルの両面から、誰もが自分に合った移動手段を自由に選ぶことができる「モードフリー」を実現します。
 3つのフリーの実現は、市民の行動意欲を高め、積極的な外出と回遊を促します。人の移動が活性することで、新しい出会いや発見、楽しみが生まれ、積極的な地域活動や消費行動を促していきます。その結果、地域経済の活性化を促進する。それが私たちのめざすITSによる地域活性です。

■柏ITSスマートシティのもたらす「3つのフリー」と「地域経済活性」

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地域のITS関係者の連携を促進する「ITS地域研究センター」

はじめに

 日本の道路交通は、これまでの道路交通政策の遂行により、全国レベルでは事故、渋滞、環境汚染等の問題に改善の兆しは見えていますが、大中都市の事故や渋滞等は、まだまだ改善を必要とする状態です。千葉県柏市は、交通量の多い国道16号、6号を有し、主要幹線道路の交通渋滞は慢性化しており、また中心市街地での渋滞や駐車場不足も深刻です。地域の交通行政としての早急な問題解決が求められています。

ITSによる持続可能な交通社会のモデルを目指す「柏ITSスマートシティ」

 柏市はこれらの問題に対処するため、2010年2月に地域の自治体、大 学、交通管理者、道路管理者、市民団体、商工団体、民間企業等の関係者により「柏ITS推進協議会」を設立しました。同協議会では、ITSによる持続可能な交通社会を具現化する「柏ITSスマートシティ」の構築を進めているところです。
 「柏ITSスマートシティ」のコンセプトは、”3つのフリー(カーボンフリー/ストレスフリー/モードフリー)と地域経済の活性化”です。現在、このコンセプトを実現するために様々な個別のITSが「柏ITSスマートシティ」に実装されています。その中の中心的存在が「ITS地域研究センター」です。

「ITS地域研究センター」の役割

 同センターは、「柏ITSスマートシティ」に実装されている個別のITSを束ねるだけでなく、市民の方々の日常生活に関係する情報を最新のセンサー技術により収集し、それらを最新の情報処理技術により集約・蓄積・融合・加工することにより、新たな情報として市民の移動・活動に役立つ「生活活動情報」を生み出します。
 この生活活動情報については、平成23年度~平成25年度に実施した総務省の戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)にて、それを市民に可視化して提供することで市民の行動変容を促進し、その結果どの程度のCO2 を削減できるかという社会実験に活用されました。
 将来的には、生活活動情報を活用して、地域の道路交通問題の解決に向けて地域の関係者がともに議論したり、地域経済の活性化に向けて、商工団体、市民団体、地元企業等の関係者が方策を協議することも検討されています。

■ITS地域研究センター(仮称)のコンセプトイメージ

地域のITS関係者の連携を促進する「ITS地域研究センター」

(1)運営体制

1.大学の役割拡大
 これまで大学はITSに関して研究開発が主で、実用化への関与はあまりありませんでした。東京大学生産技術研究所先進モビリティ研究センター(ITSセンター)では、ITS の実用化研究にも積極的に取り組むこととして、2014年から関係機関の協力を得ながら、「ITS地域研究センター」をITS センターの研究組織として管理・運営することにしています。
2.システム運営
 当面は、ITSセンターの研究組織として管理・運営するものの、将来的に自立運営の目処がついた時点で、例えば、コンソーシアム、第三セクターのような官民連携組織、あるいは大学発のベンチャー企業などに運営移管していくことを考えています。
3.関係者連携
 ITSによる地域の道路交通問題の解決や地域経済の活性化を円滑・効率的に推進するためには、地域の自治体、大学、交通管理者、道路管理者、市民団体、商工団体、民間企業等、現場の知見を有し市民のニーズを熟知している関係者の連携・協力が不可欠です。「ITS地域研究センター」では、そういった関係者による協議を有益なものにするために、生活活動情報をはじめとする様々な検討データと議論の場を提供します。我々は、「ITS 地域研究センター」が地域でのITSの実用化のための切り札になるものと考えています。

(2)ビジネスモデル

 実用化方策の最も重要なものは、センターの自立的運営のためのビジネスモデルです。このため、ITSセンターでは、「ITS地域研究センター」を大学発のITS技術として実用化を目指します。例えば、生活活動情報の価値を高めて市販可能なものにしたり、生活活動情報を使った地域の道路交通問題に対するコンサルタント業務や、地方都市の環境改善施策の評価手法のパッケージ販売なども考えています。

(3)社会実験

 実験システムを実用システムに進展させるための重要なステップは社会実験です。社会実験は、自治体のようなITSの導入主体とユーザーである市民との意思疎通を図る重要な手段です。社会実験で実験システムにより導入主体の考え方を市民に示し、それに対する市民の意見をシステムに反映させ、より良い実用システムに発展させていくことができるのです。