Solution 5 地域のニーズに応える公共交通システムをめざして

変化するライフスタイルに対応するため成長し続ける公共交通システム

 すでに柏市では、いくつかの公共交通システムの社会実験がスタートし、成果となるデータが蓄積されつつあります。しかし、多様化する市民のライフスタイルや、複雑化する交通課題に対応するためには、さらに従来にない発想による新しい公共交通システムの研究・開発が不可欠となります。エネルギー的に革新的な公共交通システムとは? 誰でもどこでも気軽に使える公共交通システムとは? ご近所散策を適した公共交通システムとは? 市民ニーズに的確に対応した公共交通システムがいくつも開発されることで、地域の交通課題をカバーすることが可能となります。通勤・通学やビジネス移動をメインとする人たちには便利でスムーズな移動を提供し、交通弱者や交通空白地帯の人たちには手軽で安心できる移動を提供することで、柏市全域の移動と回遊性が飛躍的に活性する。そのために新しい視点からの公共交通システムの研究・開発を進めていきます。
 今後も、地域の開発や人口分布の変化などに応じて、ますますライフスタイルの多様化が予想されます。そうした新たな社会変化に応えるためにも絶えず次世代の公共交通システムの在り方を考え続けることはとても重要なことです。そこにも「ヒトとマチと、共に成長するITS」の思いが込められています。

「エコライド」の研究開発 -動力を持たない省エネ型短距離公共交通システム-

[研究の背景と目的]

 我が国は65歳以上人口が総人口の23%を超える世界最先端の超高齢社会をまい進しています。一方、地方部を中心に地域公共交通の撤退が常態化して久しく、過疎化の進む地方の地域復興に貢献しうるフィーダ輸送サービスのあり方が改めて問われている状況と言えます。
 都市部においても高齢者を主たる利用者に想定した地域フィーダ輸送が求められる将来を見据えると、必ずしも現存しない形態の公共交通モードが求められる可能性がああります。本研究では,地域ごとに異なる輸送ニーズに建設コスト・消費エネルギー・運用コストを抑えて柔軟に応えられる新交通システムとして、省エネ型の短距離輸送システム「エコライド」の試作車両を開発し、その適用性について検討しています。

[エコライドのコンセプトと試作車両の概要]

 エコライドは、位置エネルギーを運動エネルギーに変換して走行します。ジェットコースターの技術を応用し下記の3点を特長とする新しい概念の軌道系公共交通システムです。
●地上一次式:車両側に駆動用動力装置・制動装置を持たず、軌道側の駆動装置・駆動装置によって駅間をスムーズに走行します。
●三方向支持方式:車輪が軌道に三方向で安全に支持される脱線しにくい構造をとります。
●無人運転:車内に乗務員が同乗せず、遠隔監視と地上制御による無人運行を行います。

 車両側に動力機構を持たないため、車両と軌道の軽量化・省資源化・省エネ走行が見込まれます。新交通システムの1/5程度(LRTと同程度)の建設コスト、鉄道の1/2程度の省エネルギー走行を、ジェットコースターで培われた安全技術を前提として実現します。
 中程度の交通機関としての性能を期待しており,営業距離:最長10km・輸送能力:2,000~2,500人/h・最高走行速度:50km/h・最大勾配:25%(14度)・最小旋回半径:12.5mといった設計諸元を想定しています。
 東京大学生産技術研究所と泉陽興業(株)は千葉実験所で、平成18~20年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託研究「位置エネルギー利用のハイブリッド型エコライドシステムの研究開発」ならびに平成21年度 経済産業省低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実証モデル事業「ITS中量公共交通機関「エコライド」の開発による低炭素化地域交通モデルの実証研究」の補助を受けて、エコライド試験車両を用いた乗り心地や座席配置等の評価実験を行って来ました。さらには、社会還元加速プロジェクト(内閣府)「ITS実証実験モデル都市(柏市)」とも連携をとりつつ、柏の葉エリアへの実証線敷設も構想しています。

>>一覧へ戻る