簡易路面調査による損傷の見える化と維持補修計画への活用検討

この取り組みを行うことにした背景/理由

 柏市の市道延長は約1,500kmにもおよび、北部市域の区画整理事業に伴う道路整備や住宅供給が続いており、道路インフラは増える一方です。従って、限られた予算の中で、市民が最も接する社会インフラである道路において、効率的な道路修繕計画を構築することが喫緊の課題となっています。
 しかし、住民から寄せられる道路に関する通報や要望は年間3,500件(道路異状・修繕に関しては約1,000件)を超えており、職員は日々の対応に追われ、個別対応せざるを得ないのが実情です。
 その主な要因は、本市が昭和40年から50年代にかけてベッドタウンとして急速に発展し、また、日々変化する全道路状況を定量的に把握することが困難で、長期補修計画が策定されないまま現状に至っていることにあります。

図-1 柏市全体図

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取組みの実施期間

平成26年10月~平成27年3月(社会実験)
平成27年4月~継続中(本格実施)

取組み内容

 柏ITS推進協議会のメンバーでもある富士通㈱と協力し、国土交通省関東地方整備局の「道路に関する新たな取り組みの現地実証実験」にて、下記の表のような施策を実施しました。具体的には「道路パトロール支援サービス(注1)」を利用し、簡易路面調査を行い、その結果をMCI(注2)調査結果と比較、さらに住民対応への活用も試行しました。(注1:富士通製の簡易路面診断ツール、注2:Maintenance Control Index:舗装の維持管理指数)

(1)スマートフォンを用いた簡易路面調査による補正劣化状態の把握とMCIとの比較
期待された効果 スマートフォンを活用した簡易路面調査は、路面性状調査(MCI測定)の簡易版として十分実用に耐えうる測定方法であることを確認する。80%以上の一致率を期待。
結果 平成25年6月にMCI測定を行った路線を平成26年12月に簡易路面性状調査で評価した。一致率は77.2%であった。
結果に対する評価 18の評価期間のうち4区間をMCI測定より劣化が大きいと検出したが、現地調査の結果、1年半の間に劣化が進んでいることが確認された。これよりMCI調査に近い機能を有していると評価した。
(2)簡易路面調査結果を用いた住民対応への活用と効果検証
期待された効果 道路補修を要望する住民に対して、簡易劣化診断結果をもとに補修の実施可否、補修工事の内容を説明し理解を得る。容認率を70%と設定。
結果 実際に補修を要望してきた住民2名、市民および市道利用者23名に対して、説明を行った。
90%の人が「資料は分かりやすい」「こういった取組は公平性が期待出来る」と回答している。
結果に対する評価 補修の優先順位を倫理的に決定し、効率よく補修して行くことは、90%の人に評価された。今回作成した説明資料は住民説明資料として有効と評価した。ただし、資料の改善の余地があることも分かった。
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図-2 スマホ搭載イメージと簡易路面調査の仕組み

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図-3 MCI測定結果と簡易路面性状調査の比較結果

今後の課題と対応状況

(1)簡易路面調査
 今回の簡易路面調査は、診断精度を確保するために同一個所を複数回走行して評価指標を算出する必要があります。平成27年6月から新バージョンを導入し、重ね合わせを自動化し、市道全体の見える化を進めています。
(2)住民対応への活用
 簡易路面調査は、車両の揺れ具合をスマートフォンで測定し、統計的に処理して舗装の劣化を診断していますが、住民の納得を得るには、その仕組みを分かりやすく説明する資料が必要となります。
(3)補修優先順位
 補修優先順位は、事故要因、瑕疵責任となるような著しい劣化を最優先とし、それ以外は、市道全体の見える化を進め、補修優先度を決めていくことになりますが、劣化状態、住民苦情等を総合的に判断した補修優先度の考え方を整理し、判断基準を明確にする必要があります。

 今回の社会実験を通じて改良しなければならない点は多くあるものの、MCI調査と比較し、①圧倒的にコスト面で有利なこと、②評価が直ぐに可視化でき理解されること、③住民説明に定量的評価で向き合えることの点から、柏市において平成27年度以降も、簡易路面調査の継続使用を決定し、現在も市道全体の見える化を進めています。

図-4 市道の見える化の状況(例)

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図-3右側と図-4の地図は株式会社ゼンリンの著作物です
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